16 stage   Final Answer Jun 22, 2024
 
 

 川沿いで生まれ育った私、夏休みは毎日のように川で泳ぎ遊んでいたので泳げますし潜れます。 但し、決して人一倍泳ぎが得意で上手でも無く普通程度で、重ねた年齢も考慮した泳ぎに関しては、自信過剰に無きよう心がけ、至った現在にある事がこの後に紹介する経験の前提となります。

 もうかれこれ20年程前になるのか・・・。 友人たちと3人で神通川で鮎釣りをしていた時の事、その日は左岸側からエントリーして釣り始め、一筋の瀬を釣り進めるに更に流心へ、更に奥へと攻めていき、結果、流れを切って右岸側へと渡って釣りを進めるに至った。 しばらくすると、ダム放水のサイレンがけたたましく鳴り川から上がる事を促された。 遅くとも2回目のサイレンで直ぐに左岸側へ戻ればよかったのだが、それなりに釣れていた事も有り、「もう少し、もう少しだけ・・・」これが仇となり、やがてジワリジワリと増水して流れを切って左岸側へ戻るには流れに呑まれるリスクが高く、それは戻るには命がけを感じる程の流量と相まる流速と化してしまった。 上がった水位は3、40㎝程ではあったが、3、40cmのその大きさを目の前にした3人が共に、流れの表情変化の脅威として感じた事、思う事は同じであり、無謀にも近道を優先に流れを切って戻ろうなどと思う者は一人もいなかった。 救いとして、今立っている場所は安全な右岸側の川原で、対岸へ戻れないだけであり、危機的でも無く恐怖感も無いのだが、流れを切って戻る事をきっぱりと諦めて踏ん切りをつけるしか選択肢は無かった。 それは、遠く上流側に見える橋、あの橋まで一旦川を上がって道路を歩いて行き、橋を渡って又、道路を下るかなりの遠回りで戻る手段、選択肢しか無かった。 鮎釣りスタイルに竿を持ち引き船を持ち、アスファルトから照り返す夏の熱波を足元から浴びながらの、車が行き交う道路をひたすら歩いて戻った、あの時の失態の記憶は今でも残る・・・。 放水サイレンが鳴ったなら、確実に早めに対応しよう・・・、そう反省した経験だった。

 あれから時は流れ、この年の6月のとある日、いつものようにアマゴ狙いで早朝からロッドを振り始め、結果が伴わない事から車移動でエリアを転々としていた。 移動中、ガサガサしていた車中にサイレンが聞こえたのは確かだが、その時の時刻が一般的な人々が活動し始める朝の頃合いであった事と、過去に見た事例と経験含めて、「水力発電の放流サイレンだろう、ならば数センチの変動で釣りに影響は無いだろう」と判断した思い込み勘違いから今回の事件に繋がっていく。 ちなみに前日から纏まった降雨は無かったはずで、この日の天気も降雨無き曇りで時々晴れ間が覗く予報でその通りにあった事も判断に関連している。

 車移動で転々とした4個所目のエリア、いつもの左岸側の駐車場所に車を停めてエントリーし、まずは大きな淵、そしてその上流側の淵への流れ込みへと釣りを進めた。 流れ込み付近でまずまずのアマゴの結果と他にも影を見た事から、更に釣り上がるプランのこの先を期待した。 淵に続く流れ込みから更にその上の流れは二手に分かれている為、平水で難無く左岸側から流れを切って中州へと渡り、上流側に見て右手側の分流をいつものように釣り上がって行った。 この分流は自身にとっての定番ポイントで、魚を見ない事など無き期待できるエリア、ポイントなのだが、中州に渡ってからは、この日は全く反応が無く、おかしいな・・・と思いながら約500m程のエリアを遡行して釣り進め、いよいよエリアのゴールに近づいた頃、魚の気配無き原因が判った。 ゴロゴロに転がっている石の上を歩いて遡行する特徴から、足跡が確認できずで気が付かなったのだが、先行者の存在が見えたのだった。 その先行者はフライマンで、丁度ゴール場所を釣り終え私の方へと近づいて来た。 互いに挨拶を交わし中州の高台で情報交換に花を咲かせていった・・・。 ふと、異変に気が付き流れを振り返り見ると、それまで穏やかだった流れが、濁りと共にあっという間に勢いを増していった・・・。 「うっわー、マジか、車中に聞こえたサイレンはダム放水のサイレンだったか・・・、こりゃ対岸へ戻れないかもしれん、フライマンさん、やばいよ、大丈夫か?」、「僕は右岸側の分流からエントリーしたので、たぶん大丈夫と思います。」そう言って足早に引き上げて行く。「絶対無理すんな~!気を付けて」 その後まではわからないが、おそらく、多かれ少なかれに支障がありながらも無事にエントリー口へと辿り着いたものと思う・・・。 さて、問題は私の方だ、容易にはこの中州から左岸側へ戻れない現実に直面している。 一旦、流れの様子を伺いながら下流側へと移動し、胸ポケットに入れたスマホはこのエリアに居る間、時折ピコピコ成っていたので繋がるであろう事は認識していた。 ならば、消防署に救助を求めるか? いや、この程度で万が一大げさにニュースにでも取り上げられたなら恥ずかしいばかりだ、それは最後の最後の手段、選択肢として、他の手段、選択肢を考える・・・。 少し時間が経過して濁りは薄まっていき、僅かではあるが水位も下がりピークは越えた感がある。 この天候を踏まえると、これ以上に悪化する可能性は低く良化に向かうだろう、との推測から、水位が落ち着くまでこのまま気長に待とうか・・・との選択肢も考えた。 ただ、白泡を立てて複雑に勢いよく流れる光景を見ると、今日中に片付く事か?との不安がよぎる・・・。 この日の装備は、ドライの長靴タイプのウェーダーでは無く、前回釣行からウェットのライトスタイルに変更していた事もあり、泳いで渡る事も選択肢の一つとした。 何も出来ず漠然と水位が下がる事をただ待つくらいならと、泳ぎ渡れそうな場所を探す事とした。 各所流れをチェックしていき、結果、2箇所を候補として挙げた。 ただ、ウェットのライトスタイルは良しとしても、片手にはロッド、ベストは便利道具なども全て詰め込んだ、それなりに重装備で重りを背負うような点がハンデとなる。 安全を優先するならロッドもベストもその中身も全て諦め放置し、身軽にして泳ぐ事優先がベターか・・・、泳ぎ渡るという選択、それは一歩間違えば・・・の、覚悟もいるよな・・・。 自身の中で、様々な考えや意見が飛び交う。 とりあえず、このままで泳ぐとするならで、チェックを進める。 アクションカメラ、スマホは防水仕様で問題ないだろう。 アイコス関連、これはダメだな、と、ベストの胸ポケットに忍ばせている山菜採取用のコンビニ袋を2枚で2重にして包み込む。 あとは・・・と、他、全身濡れても大丈夫だろう。 いざとなったらロッドは手放して諦めるか・・・。 準備は整った、後は心の準備と決断だけ。 候補に挙げたまずは1箇所目、比較的流れの幅が絞られていて対岸までの距離は短い、しかし、結構な流速ある絞り込まれた速い瀬があり、そこさえ泳ぎ越えればその先の緩い巻き返しの流れを越えて岸に辿り着ける。 いざ、流れの直前に立つと、見た目以上に絞り込みの流れが速い。 それに流されれば、その下が落ち込みへと続くので範囲が限られる。少し高い位置から勢いをつけて飛び込み泳げばなんとかなりそうだが、どう見ても一旦岸から胸あたりまで流れに浸かってから瀬を越えるしかない・・・。「リスクの方が明らかに高いな・・・。」 無理はせずここを諦めてもう一つの候補へ・・・。 ここは開けた流れで少し川幅が広く、泳ぐ距離も長くなるがその分だけ流速は一定で速くは見えない。 そして、流れの中心あたりに大きな沈み石が確認出来る事から、まずは沈み石まで泳ぎ、一旦休んでから残り半分くらいを泳ぎ切れば良いと計算した。「よし、ここにするかっ。」 まずは流れの中心付近にある沈み石に到達する為の泳ぎ流される角度を計算して少し上流側に立ち、いざ、覚悟! 岸際から勢いをつけて飛び込む「ザバーン!」 左手にロッド、右手中心に流れを漕いで沈み石を目指す・・・。 見た目、思ったより流れが速い、深い・・・。」 概ね計算通りに沈み石付近まで来た。 あとは絶対に流されて踏み外さないようにと、確実に沈み石の上に乗り・・・立つ。 「ふ~・・・」 とりあえずここまでは成功。 一息入れて、360度囲まれた増水の流れの真ん中からその先を見た途端、「これ、ホントに対岸まで行けるのか? 結構な流速あるし、その下まで流されれば複雑な流れに揉まれるよな。」 「引き返そうか、でもな、引き返すにしても、ある程度に流されながら岸に戻るまでの距離が足りず、こちらもその下の複雑な流れに揉まれるよな・・・。」 その瞬間、頭の上からドカーンと一気に絶大な不安に襲われる。後にも先にも行けぬような現実に直面した事で、愚かにも取返しのつかない事をしてしまった・・・、全て終わったか・・・・・。 これまでに経験の無き、最大の孤独な不安に支配され、自身がこの世に存在する事の諦めを覚悟する瞬間があった・・・。 それでも、諦めたく無きもう一人の自分が現れ、もう一度冷静に冷静に、周りを見渡した・・・。 進むにも戻るにも流れに揉まれ呑まれるリスクばかり、が、戻る側の下流側、落ち込んで複雑化する流れの直前に沈み石の存在が見え微かな光が差した。 流れに乗りきらずに泳いで沈み石に辿り着き、足を乗せて踏ん張る事が出来れば元の岸へ戻れる活路に繋がる。 もはや生きるか死ぬかの状態に置かれているからには、後は無き完全一発勝負になるがやるしかない・・・。

 幸いに、成功して元の岸に辿り着いた。 しかしそれは、命は繋がったものの振出しに戻っただけ。 現時点に見える中で、泳ぎ渡る選択肢が消えた事となる。 さ~、どうする? いよいよヘルプの通報か? いやいやまだまだ、とりあえず、まだ確認していない更に下流を確認する・・・、激しい落ち込みの流ればかりで難しい・・・。 では、もっと上流に行こう・・・。 再び約500m程遡行し、釣り時点のゴールより更に上流を遠目に見ると、可能性らしきものが見えた。 このエリアの釣りゴール付近は、中州形状の最上流先端に該当し、右岸側からの流れが横切るように溢れ流れているが、なんとかそこを上流側へと歩いて渡れそうで、渡りきれば、そこには今居る分流が更に分かれた分流になっている事から、分流の分流がゆえに水量はここより少なくなり、そこから左岸側の岸へと渡る事が可能と計算できる。 但し、ひとつ残された課題はあって、エントリー口から左岸の岸は遡行した経験が無い為、いざ渡れたところで、立ちはだかる物があれば下り歩いてエントリー口まで戻れる保障は無い。 それでも、第一に優先すべきは左岸側へ渡る事、渡りさえすれば、下り歩き戻る川岸に岩や草木が立ちはだかろうとも、何かしら手はあるだろう・・・。 中州上流側に溢れた流れの中に、足場となる石を慎重に次々と踏み台にして進み・・・、なんとか渡り切る事が出来た。 そして、分流の分流の流量と渓相を見渡し、これなら左岸側へと渡れると確信した。 腰付近までの水深の流れを渡り進むが、大小不揃いに川底に敷かれた石は、普段からの川底の石として石垢がたっぷりで時折進める足をすくう。 思えば、ここに至るまでの沈み石は、普段は水中には無き石であった事から、石垢が無く踏ん張りが効いた事が、ここまでに至れた経緯でもあっただろう・・・。 遡行経験無き左岸側の川岸約500m以上の距離を歩き下る・・・、大小様々な石を乗り越え、草木を搔き分けながらも幸いにして立ちはだかるような障害も無く、釣り始めた淵に着き、そしてエントリー口から車へと足を進めた・・・。 やがて車が見え、車に到着した時、戻れなかった可能性もあったんだろうと、改めて戻る事が出来た事実を実感した。 時刻は既にお昼頃、通常ならエントリーしてから1時間もあれば周れるエリアで、約3倍の3時間もの時間を費やしていた事となる・・・

これまでの人生の大半を川、流れに関わり、川の楽しさを知り、決してなめる事無く川の怖さも知っているつもりではあるが、勘違いや思い込み、油断、判断ミスが重なれば、自然界の脅威に立たされる事となる。 全ては己の失態と猛省するばかりであった。

今日までに、私は河川の釣りが大好きな性分から、事故であれ何であれ川で生涯が終わる事があればそれも本望・・・などと言ってきたが、今回の件をもって、それもどうか、と考えるに至った。 ご覧いただいた皆さんにとっても安全が常に最優先であるよう、今回の私の失態が少しでも参考になればと、恥を承知で動画とこのサイトで紹介させていただきました。

 

 

 

Next stage plan : Jun 29

 

    Tackle            The tackle that I used on this stage Message

Rod
Reel
Line
Leader
Lure

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SMITH  troutin'spin inter boron X TRBX-60MT (remodel)
DAIWA  CALDIA LT 2000S
SANYO NYLON APPLAUD GT-R ULTRA
VARIVAS TROUT SHOCK LEADER FLUORO CARBON  8lb
Sinking minnow 50mm
Thank you
         see you

River Land

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